正直な話、もう歳も歳だし、結婚して子供もいるし、このオーディションでどうにかならなかったら本当に本当に諦められるかな、と思って受けた私にとって最後のオーディションでした。オーディションの年齢制限もギリギリだったし。
私にとって歌はモノクロの日々に色をつけてくれます。
昔から目の前の景色がグレーのベールを被っているような、そんな世界に見えていました。わけもわからず毎日、泣くというよりも涙が溢れて、心のどこかが虚しかった気がします。
今思うと、我が強くてちょっと変な子...ああ、いやだ。そんな私の不安定を治す薬が音楽を聴くこと、歌うことでした。
生まれたときから歌うのは大大大好き。小さな頃は、神様が魔法で歌手にしてくれるって思っていました。
しかし、いつまでたってもいたって普通な女の子のまま。高校生のときに友達と遊びにいったカラオケ店で見つけたオーディションにこっそり参加して県の代表に選ばれました。このとき、漠然としていた夢はリアルに、遠いものではないんじゃないかと感じました。
しかしレッスンを受けても、メジャーCDに参加しても、ライブをしても、自分の思うように届いていかない。自分より歌が上手い人、自分よりキレイな人、自分より輝いてる人なんてたくさんたくさんいます。そのうちなにが目標で歌を歌っているのかさえ見失いそうになってきました。
そこで思いついたのです。全部リセットするために海外へ行こう。南国で自由気ままにすごそう。
何も知らない場所で出会う人々。孤独と人のあたたかさを全身で感じることのできた日々でした。そしてなによりもカラフルな自然と太陽のパワーに心が洗われました。
しばらくして日本に戻り、カラフルな世界を失わないように、歌を歌い続けました。しかし夢を追い続けていた中で音楽と離れるときがきます。父親が癌で倒れ、父の経営する会社を手伝うことになるのです。
いいタイミングだと思いました。このまま東京にいてもどうしようもない、歌は諦めるしかないと自分に言い聞かせながら地元に戻り、家族や愛する人との充実した毎日、結婚し子供を出産て、守るものができました。
しかし、夢を諦めたと言い聞かせても、歌うことが私の支えになっていました。やっぱり私には歌が必要だったし、一番私の心を見抜いていたのは、一番近くにいた愛する家族だったのかもしれません。私が歌を歌う姿、私の歌声を一番に喜んでくれたのは、まず家族でした。
そこで気づいたんです。
今までもうんざりするほどの希望を、新しいなにかと引き換えに捨ててきた自分がいました。だから諦めるなんて怖くないはずでした。
しかし諦められる日がこなかった。歌わないことがツラかった。
どこかで1%を信じてしまっていました。
そこでたまたま見つけたオーディション。それがGVAでした。今までの自分を全てぶつけよう。ちゃんと見てもらおう。これでダメならもう終わり!と思って全力で挑みました。
やっぱり2次審査で落選。
少し落ち込みましたが、それはそれで人生さ、と自分に言い聞かせている中、幸運の電話がかかってきたのです。
私が今回メンバーに選ばれた理由のひとつが「結婚して子供がいること」。それを知った瞬間、なんだか「ありのままでいいんだよ」って認めてもらえたようで、すごく幸せな気持ちになりました。
あのときオーディションを知らなかったら、受けていなかったら、練習してなかったら、違う歌を歌っていたら、結婚していなかったら、子供がいなかったら、、、考え出したらキリがありませんが、全て今の自分に繋がっていることを改めて実感しました。
私が歌を歌うことで、まずは自分の日々を鮮やかに彩りたい、愛する人と笑顔になりたい、誰かの心を動かしたい、、、夢が大きすぎて叶わないもののほうが多いかもしれないけど、諦めないこと、歌い続けていくこと。
過去のこと、未来のことよりも、「今」を鮮やかに生きていくこと。
きっと私は死ぬまで歌に支えてもらうことでしょう。その中で私が歌に助けられたように、私の歌声で誰かの世界をカラフルにしたい。笑顔にしたい。ハッピーにしたい。みんなでハッピーになれたら最高!
そのスタートラインにやっと辿り着きました。ここからまた長い道のりを一歩ずつ、今まで以上にカラフルなものにして、足跡には花を咲かせ、道しるべをつくっていきます。